秘密の恋人はきっとやさしいわ。
なぜなら、魔王様と付き合える。一般人はできないかも。
レイジさんってば、結婚間近だなんて噂されてても、一向に否定もしないし。
むしろ、ラブラブ発言までするし。
『アイツには、毎日愛してるって囁いてる』
……だなんて。
本当の恋人である私でさえ、聞いたことがない言葉なのに。
もちろん、世間にバレてはいけない、秘密の恋だってわかってはいるけれど。
なんだか、ここまで露骨に私という存在を隠されのるは
寂しい……。
「何膨れてんだよ?」
膝を抱えてソファに座る私の隣に、レイジさんが腰を下ろした。
チラリと横目に見れば
肩にタオルを引っかけて、ワイングラスに口をつけるお風呂上がりのレイジさんの姿。
ジーンズを履いただけで、上半身は裸。
濡れた髪からポタポタと落ちる雫が、逞しいレイジさんの体に滴るその光景は
あまりに色っぽくて、思わず目を覆ってしまう。
……もう、なんでそんなにカッコイイんだろう。
レイジさんと付き合ってから3カ月がたつのに、未だに真正面から見れない。
まだほんのり上気したレイジさんの表情に、ドキドキが加速しちゃう。
「レイジさんは……いつも余裕ですよね。」
「はっ?」
私の突然の発言に、レイジさんは眉をひそめて声をあげた。
……だって。
レイジさんは、私とは違って大人で。
ドキドキしたり不安になったりするのは、いつも私ばかりで。
なんだか、不公平だって思っちゃう。
「何だよ、あの発言を怒ってるのか?仕方ねぇだろ。ああしてゆずと順調だってことをアピールしといたら、妹であるおまえと一緒にいても不思議に思われないし、むしろちょうどいい。」
……たしかに、そうだ。
家族ぐるみの付き合いをしてるってことで、私がレイジさんと一緒にいるところを誰かに見られても、全然おかしくはないし。
いい口実だとは思うけれど……。
「別に、怒ってなんていません。」
そう言って、床に無造作に置かれていた雑誌に目を向けた。
留言列表