あなたの周りはこういう人がいるかな?
口出すだけ、何もしない人。災厄だよ。
「ねぇ、いい加減俺と付き合わない?」
「付き合いません。仕事の邪魔です」
世界で一番大嫌いな男。
世界で一番苦手な男。
なのに今日も彼は私に付きまとう。
「惚れた?」
「自惚れんな」
誰もが羨む超絶イケメンな男。
だけど女たらしのいい加減。
絶対に絶対に好きになんかならない。
「あ、ちゅーしちゃった」
「さ…最悪っ!!」
私と彼の
バトルが今日も繰り広げられる。
甘々な日々
の
最悪な裏事情
「れーなーちゃん!」
きた……。
頭の後ろから呼ばれる、鳥肌が立つような呼び方。
何も気づいてない。
誰も私のことなんて呼んでいない。
確かに聞こえた、自分の名前には何も気づいていないふりをして、私はそのままパソコンに置かれた指を動かし続けた。
「え、シカト?」
「……」
さっきより、明らかに近くなった声。
あー嫌だ。
「玲奈」
「……勝手に人を、名前で呼び捨てにしないでください」
これ以上無視することのほうが、身の危険を感じ、
振り返ることなく、その声の主へと返事をした。
「やっぱ聞こえてたんじゃん。わざと?」
「用件はなんですか?」
相手の質問には答えない。
冷たく言い放った言葉に、彼はそのままの調子で口を開いた。
「今日の夜は空い……」
「空いてません」
そして、分かり切っていた質問に、最後まで言わせることなく返事をした。
私たちのやりとりを聞いて、周りから聞こえるクスクスと笑う声。
その雰囲気にも、いい加減慣れていた。
「俺、まだ全部言ってないんだけど……」
「全部聞く必要もないと思ったので」
「うわっ。玲奈、超冷たい」
さっき注意したばかりだというのに、なおも人を「玲奈」となれなれしく呼ぶ男。
「今日も振られたな。凌太」
「ひどいっすよねー。俺はこんなにも玲奈に求愛してるって言うのに」
「お前をここまでスッパリ切る女も、伊藤さんくらいだろ」
「ですよね!」
自信満々にそんなことを言ってのけるこいつ……岬凌太(みさき りょうた)。28歳。
私よりも2つ年上で、一応先輩社員に当たる。
こんなにも自信満々に言っても、非難する人が誰もいないのは、振り返って彼の顔を見れば分かることで……。
「玲奈も一回くらい、凌太くんと食事してあげればいいのに……」
「そうだよー。あたしが変わってもらいたいくらい」
誰もが認める、「イケメン」と呼ばれるのにふさわしい顔立ちをしているからだ。
整った顔に、八頭身はある長身。
髪も地毛から茶髪らしく、綺麗な色合いなのにダメージ一切なし。
低い声の中の甘いボイス。
一度は口説かれてみたい、と人は言うが……
「やめて。こっちは災難」
私にとって、彼はただの疫病神でしかならない。
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