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何もやらないひとはきっと嫌われるよ。

 

最低限やらないなら、文句言わないて。

「お待たせ!帰ろ」
「うん」


真央の帰りの準備が終わって、一緒にフロアを出た。

外はすでに真っ暗で、夜風が少しだけ冷たい。


「いやー、今日も見事な振りっぷりだったね!凌太さんに」
「やめてよ……。今、あの人のこと思い出したくない」
「あはは、明らかに不機嫌になった」


私の反応を見て、面白そうに笑う真央。

他人から見れば面白いかもしれないけど、本人からしてみたら、物凄い迷惑な話なのだ。


「でもどうして、そんなに凌太さんを嫌うの?あんなに上玉な人なんて、そうそういないよ?」
「上玉って……。べつに、顔がいいだけじゃ、上玉なんて言わないでしょ」
「凌太さん、顔だけじゃないじゃん!
 性格も面白いし、仕事もできるし、頼りになるし!
 あたしだったら、凌太さんなら速攻OKするのにー」
「だーかーらー……」


周りの女の子は、決まってそう羨ましそうに言う。


確かに、真央の言うことは当たってる。

冗談をいつも言う岬さんは面白いし、人当たりもいいから自然と人が集まる。
仕事もスマートのやりこなし、チームリーダーとして、上司たちからも期待されていた。

だけど……

 

「何度も言ってるでしょ。
 私が異性に求めているのは、硬派な男なの!」

 

どんなにいい男でも
ちゃらけた男は勘弁だ。
「硬派って……。絶対にそんな男、つまんないって」
「つまんなくない。騙されるよりマシ」
「アンタ、男をどういう目で見てんのよ」
「……」


一言で言うなら、苦手な対象だ。

全ての男の人が…というわけではない。
仕事人間だったり、真面目そうな人なら平気。

だけど岬さんのような、女慣れしている男は、とくに苦手なのだ。


全ては、過去の嫌なトラウマから……。

 

「とにかく、チャラいのはダメ!
 岬さんを好きになる確率考えたら、部長を好きになる確率のほうが高いってこと!!」

 

いい加減、岬さんの話をされるのが嫌で、ありえない相手も対象にスパッと言い切ってやった。

部長とは、もう50を迎えた、髪も薄くなりつつある独身部長のことである。
見た目はいかにも親父……といった感じだけど、とことん真面目な人なので、本当のことでもあった。


スパッと言い切ってやったせいか、真央からの反論が返ってこない。
やっと納得したか。と思い、顔を上げると……

 

「へえー。俺があのハゲよりも下だとはねぇ……」

「げ……」

 

そこには、真央の姿ではなく、
今まさに話題としている、岬凌太の姿があった。
「み、岬さん……」
「ひでぇなぁ……。俺、こう見えて、まだまだ20代のイマドキ男子のつもりなのに。
 50過ぎたオッサンに負けてるってこと?」


ズイと前に出て、にこりと微笑みながら私の顔を覗き込む。

近くで見れば、確かにその顔は見惚れるほど整っていて、一瞬呑まれそうにもなった。


「せ、世間一般的から見れば、岬さんのほうがいい男かもしれないですけど。
 私から見ると、そう見えてるってことです」

「……」


だけどここで怯んだら相手の思うつぼ。
同じように、にこっと微笑んで、もう一度面と向かって言ってやった。


「俺、結構硬派だよ?」
「そうは見えないです」
「こんなに、玲奈一筋なのに」
「その割には、いつも女の子をはべらせてますよね」
「それは勝手に寄ってくんの」


ほら……。この言い方が気に食わない。

それに知っている。
この人が、私にアプローチをかける前までは、手当たり次第、女の子を相手にしていたということ。

根が女たらしであるとすれば、たとえ今、私一筋だと言い切っているとしても、絶対に浮気されて捨てられるに決まっている。


「玲奈が俺の彼女になってくれるんなら、いっさい女の子と絡まないよ」
「必要ないです。彼女になるつもりもないので」
「なんで?」
「だから好きにならないって言ってるでしょ!!」


あーもう!
話が分からない男だ!
 

 

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