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間違えっている時、どうすればよいでしょうか?

人どれぞれの考え方あったから、やり直す?あきらめる?

あなたはどうするの?

 

気がつけばあれから4年の月日が流れていた。


その間にもいろいろあったけれど、私は幸せだった。


高校の卒業も、成人式も。

貴方が隣にいるだけで良かった。


いつもふと、まだ17歳の儚き少女だった頃を思い出す。


噎せ返るように暑い夏になれば、貴方のもとから去った日を。


秋の高い空を見れば、あの公園で約束を交わした日を。


極寒の冬は、冷たい雪の中で無惨にも引き裂かれた日を。

 

そして春、貴方と結ばれた日を。


生涯忘れる事はないだろう。

 

私は今、とても幸せだ。

大学から帰り、自分の家より親しみのあるその扉を開ける。

高校は翠と同じところを九堂寺から通って卒業したが、大学からは否応なしに華秋院に身を置くことになったのだ。

九堂寺の令嬢となれば大学卒業は必須で、今はかの有名な女子大に通っている。真里さんの母校でもあるらしい。

もちろん大学院など行くつもりはない。

いつの日か抱いた教師への憧れは、無理があると判断した。


だが諦めたワケじゃない。無類の子供好きである私は、とあるピアノ教室にお手伝いとして週2日のアルバイトをしていた。


「あら、お帰りなさい」


こうして掛けられる暖かい言葉は、毎日のことでも心がポカポカする。

 

「あ、鈴木さん、ただいまです。

紫月は帰っていますか?」


4年間訓練を積んで、やっと紫月と呼び捨てにできるようになった。


まぁ呼び捨てと敬語が抜けるまで、みっちり強調されたと言う方が正解かもしれないが。


「紫月坊ちゃんならまだ帰っていませんよ。

ですが今日は亜月坊ちゃんと奏音さんがいらっしゃってるようです。


それに…」


そこまで聞いて、私はやった、と喜ぶ。

 

「姫乃(シノ)ちゃんも来てるんですね!?」

 


鈴木さんは「はい」と微笑む。


私は急いで自室に荷物を置いて彼女に会うために広間に向かった。
姫乃ちゃんは3年前に亜月様と奏音さんの間に産まれた長女。


これがもう可愛くて可愛くて。

 

まぁあの亜月様と美人な奏音さんの子供が可愛くないワケがないんだけど。


本当にもう癒される。子供好きにとっては堪らない。

 

 

バァァンと広間の扉を開ける。


そこにはオモチャで遊ぶ姫乃ちゃんと、それを微笑ましく眺める夫婦。


綺麗で絵になる家族だ。

 

 

「こんばんは、ただいま帰りました!」

 

最近は頻繁にお屋敷に顔を出してくれる亜月様。


奏音さんと二人三脚で育児に励んでいるようだ。

 

暫くは仕事ものんびりやっていくらしい。

 

そして私は奏音さんとも仲良くなり、姫乃ちゃんは産まれた時からよく面倒を見ている。

 


「あー! キョー!」


トテトテ、と走り寄る姫乃ちゃん。

 


「おかえり、響。姫乃もずっと待ってたわ」


「そうですか。 じゃあいっぱい遊びますね!」

 

奏音さんに答えながら、私の足にしがみつく姫乃ちゃんを抱き上げる。


今日も赤ちゃんの良い匂い。

 


ふわりと柔らかな髪は、絶対に亜月様譲りの優しい亜麻色。

肌も真っ白で、唇はふっくら桜色。

 

これは絶対に将来美人になる。

 

「キョー!」


最近よく喋り始めた姫乃ちゃんは私の名前を連発。


あー、可愛いよー。

 

「響ちゃんは子沢山になりそうだね。

なんせ紫月は毎晩元気みたいだし」

 

姫乃ちゃんのほっぺたにスリスリしていると、亜月様がそんな事を言う。

 

和やかな表情で下ネタやめてほしい。

奏音さんも奏音さんで慣れてるみたいで、亜月様の発言に見向きもしないし。

 

 

 

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