どうして好きなのに、手伝ってくれないかな?
本当に好きなの?
さて……
今日もいい時間だし、そろそろ切り上げるか……。
時間は22時を過ぎたところ。
週の真ん中から、あまり遅くまで仕事をやると、金曜まで体がもたない。
月末ということもあって、忙しいこともあったが、今日はこれで帰ることにした。
「あ、伊藤。ちょっといいか?」
「え?あ、はい」
突然、課長からの呼び出し。
閉じかけたパソコンを戻し、課長のもとへ行った。
「もう帰り?少し時間ある?」
「はい……大丈夫、ですけど……」
「よかった。じゃあ、すまないが、これを頼む!」
「え……」
ドンと渡された書類の山。
一瞬にして、嫌な予感がした。
「明日の朝一の会議で使うんだが、ファイリングする時間がなくて。
悪いが、これを人数分閉じて、俺のデスクの上へ置いておいてくれ」
「……わかりました…」
時間がある、と言ってしまった以上、仕方がない。
心の中でため息をつきながらも、その書類の山を受け取った。
ここじゃ広げられないし、どっか会議室借りるか……。
デスクの上に書類を広げるのには、限界がある。
パソコンを閉じて、書類の山だけ両手に抱えると、空いている適当な会議室を借りることにした。
ってか、なにこれ。
量多すぎでしょ。
ファイリングしなくてはいけないのは、ざっと30ページ。
それを25人分用意して、真ん中で折り込んだあと、ホチキスで止めなければいけない。
最悪……。
顔を上げると、もう22時半。
急いでやらなければ、終電が危うい。
長デスクの上に、1ページから順に並べ、まとめやすいように広げると、シンと静まりかえった会議室の中で、一人ファイルを閉じはじめた。
カチコチと聞こえてくる時計の針の音。
それが妙に焦らせる。
終電は確か、23時半前。
ここから駅まで歩いて、10分。
タイムリミットまで、あと40分。
大丈夫。
間に合う。
ささっと、まずホチキスで止める前に、30ページ分まとめていった。
だけど最後のほうになって、違和感を感じる。
え、足りなくない?
25人分用意してほしいと言いながら
明らかに、20人分くらいしかない。
あいつ……。
コピーする枚数間違えたな……。
ここでうだうだしていても仕方ないので、大きくため息をつくと、一冊分の書類を持って、フロアへと戻った。
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