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コンプレックスは何となくあるでしょうか?自分の外見、学歴、職歴、、、等々。

もし、いつかコンプレックスがいきなり全部消えてたら、感じがよくなるかな?

朝、うなされて目が覚める。
暗闇の中、一瞬、現実と幻想の区別がなくなる。

「また、あの夢…」

 髪の毛が首筋に張り付いて、気持ちが悪いことこの上なく。
 ベッドから上半身を起こすと、私は額に手を当て、髪をかきあげた。

――油断、した。

 疲れたとき、必ずと言っていいほど私はその夢を見る。
 トラウマという、過去の夢を。

「最っ低」

 思い出したくなんか、ないのに。
 思い出さなければ、いいのに。
 夢となって尚も私を苦しめる。
 私はベッドから起き上がると、そのまま部屋を出て一階に降りた。
 向かう先は、洗面所の奥にある浴室。

 こうして私の一日は、始まったのだ。
お風呂から上がり、髪を乾かしていると家族たちも起き出してきて。
家の中は慌ただしさに包まれる。

 私は私のペースで会社へ行く準備をし、朝ご飯を食べてから歯を磨き、念入りに化粧をしてから家を出た。

「おはようございます」

 玄関を出てすぐ目にしたのは、年下の幼なじみで。今時珍しい黒髪の、爽やか一歩手前な好青年である。

でも、私は彼が苦手。だから、なかなか目を合わせることができない。

「宏、さっき起きたばっかりだからもう少しかかると思うよ」

「まあ、いつものことですね」

自然さを装いつつ、彼を視界に入れないよう意識的にドアの取手に意識を払う。
大丈夫、普通に見えるはず。そう、自己暗示をかけながら。

「いえ、別に…」
とりあえず私は悠くんに踵を返し、先程起きたばかりでバタバタしているだろう弟の宏に、悠くんが迎えに来たことを告げるべく一旦中に戻った。

 声を張って呼んでみれば、慌ただしい足音とともに宏が姿を見せる。

「やべ、行ってきます」

 お気に入りのスニーカーで足元を彩り、茶色に染められた毛先は寝癖なのかお洒落なのかわからない跳ね具合。

「いってらっしゃい。私も行くけど」

 結局何故か一緒に家を出る羽目となり、駅まで三人の道のりとなる。

 別に一緒に行くつもりはなかったものの、距離を空けるタイミングも逃し、だらだらと大学生の弟とその友達と出勤するという摩訶不思議な状態を生み出してしまった。

 もう少し早く出ればよかった、そう思ったけれど今更嘆いたところで何かが変わるわけもなし。
「んじゃ」

 ようやく駅に着いたところで、私や彼らに別れを告げた。

「え?姉ちゃん一緒に行かないの?」

 宏は、無邪気だ。

「いや、姉と一緒に登校ってどうよ?」

「別に気にしないけど」

「うん、気にしろ」

「どうせ、目的地は一緒じゃん」

「でも、さ」

 宏も引かない。

「大学入ったらすぐ方向違うんだし、他の教員たちも気にしてないって」

 そういう問題か。いや、普通年頃の男の子なら姉を見られるの嫌じゃないのか。
 ていうか、いくら幼なじみでも悠くん困るだろ。

 そんな思いを込めて宏を見つめるけれど、全く気にしたそぶりはなく。むしろ本気で私の行動が理解できないみたいだった。

 かわいい、けれど少し先が心配になった。

「宏、七美(なみ)さんが困ってんぞ」

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